アメリカとヨーロッパの市民のうえに暗い影が落ちた。わたしは一生をテロの恐怖のなかで過ごしてきたイスラエル人として、次のことを断言できる。テロは人生を苦いものにする。人々は「軍事的な」気構えでふるまうようになり、絶えまないストレスにさらされることになる。ー「死を生きながら」p172より
評価:★★★★☆
1ヶ月近く前になりますが見てきました。物語は不審なアラブ人が関連した事件を中心に進んでいきます。主人公のひとり、ポールは9.11以降、ベトナム戦争の悪夢にふたたびうなされるようになり、テロから自国を守るために不審なアラブ人の行動を日夜問わず調査していきます。見えない敵・テロと戦うポールの姿・悲哀さは、テロがうえつけた恐怖の根深さを感じさせます。
もう一人の主人公であるラナは、ポールの姪でアフリカとイスラエルで10年間過ごしたあと、物語の冒頭で故郷アメリカに戻ってきます。アメリカ人でアフリカ・イスラエル育ちというラナは、人種を超えたニュートラルな視点を備えていて、そもそもテロがなぜ起こったのかという問題にまで話を広げていきます。
アメリカの視点、イスラエルの視点に加え、そうした視点を超えた「人間愛」のようなものが一つのエピソードにうまく取り込まれていて、とても良い映画でした。ただ個人的には、最後の方が立ち話のような感じでまとまっていて、少し説教臭い印象を受けました。そこが残念です。16日間という短期間の撮影スケジュールだったせいもあるのかもしれません。
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