彼は10年前に起きた戦争で両親を失い、8年前に事故で娘を失ったそうだ。
妻を5年前に病気で失い、飼ってた猫も3年前に失って、彼はとうとう孤独になった。
幸せな過去が今の自分を苦しめるとき、人は記憶をなくしていく。
哀しみを募らせないよう、孤独に負けないように、幸せの痕跡を削っていく。
彼はどうして良いのか分からない。
年々、哀しみは薄くなっていく。元気も取り戻しつつある。
しかし、それと同時に家族の痕跡が消えていく。
どうして良いのか分からない。ただひたすらに恐怖を感じる。
忘れていくこと。平気になってしまうこと。それを恐怖と感じないこと。無に還る世界。
彼は消えゆくメモログの運命と、過去の記憶とを結びつけているのかもしれない。
過去の記憶を忘れぬよう、幸せな思い出を忘れぬよう、彼はメモログのそばにいる。
コメント